■「ランド・オブ・セイント 聖人の邦」日本語吹替版キャスト 林あゆりさんインタビュー
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林 あゆり(はやし あゆり / フリー)

■ インタビュー

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── 主役の一人であるアッスンタにキャスティングされた時の気持ちを聞かせてください。

林:「嬉しい! やったー!」という喜びと同時に、常日頃から応援してくれている方々への感謝の気持ち、そして「これでやっとスタートラインに立てた! ここからだ! やるぞ!」という、収録に向けた強い気持ちが一気に溢れ出てきました。
その日の帰り道は、嬉しさとやる気を噛みしめながら、少しだけスキップして帰りました!(笑)
有難いことに、一緒にオーディションを受けた周りの方からも「林さんの演じるアッスンタ好きです」と言っていただけて、その言葉も励みに「私ならできる大丈夫!」と自分自身を鼓舞しながら挑戦しました。

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── この作品は、子供の保護を目的に判事が犯罪組織(以下、マフィアと呼称)の親から親権を剥奪するという、イタリアで実際に起きた変革を扱った社会的問題作です。
世界観とテーマをどのように捉えましたか?


林:フィクションではなく同じ世界で現実に起こったことだと知り驚きました。自分が今こうして日々平和に生活できている日常が、どんなに貴重でかけがえのないものかを痛感します。
マフィアには長年の歴史で培った組織力や掟があるけれど、その一人ひとりに大切な家族がいます。一方の司法の側にも、国や人々を守るという大きな使命があります。相反する立場とはいえ、それぞれに正義があって、それぞれの居場所で、大切なものや家族を守るために必死に生きている。そのことの難しさがテーマなのではと感じました。

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── アッスンタはマフィアに運命を翻弄される女性ですが、演じる上でどのような役作りをしましたか?

林:常に頭のどこかで彼女の事を考えていました。
登場する一つひとつのシーンを思い出してはその時々の苦しさ、必死さ、喜び、悲しみ、絶望という様々な感情を自分の感情とも重ね合わせたりしながら、その気持ちを芝居で再現出来るよう心の中の引き出しにしまっておく感じです。
普段の生活で「こんな時彼女だったらどうするかな」と考えながら、つい眉間に皺を寄せていることも多く、久しぶりに会った友人に「人相わるくない?大丈夫?」と心配されることもありました(笑)。
あとは表情や動きだけでなく、目線や呼吸からも一つ一つ丁寧に感情を汲み取る事を意識しました。

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── 判事のヴィットリア、姉のカテリーナと、3人の女性の関係の推移がこの物語でドラマティックに描かれていきます。その関係性の変化について、どのように感じましたか?

林:ヴィットリアは本当に優しく真っ直ぐな、かつ不屈の精神力を兼ね備えた人で、だからこそアッスンタを正面から受け止める事が出来たのではと思いました。アッスンタも戸惑いながらそれを理解したからこそ最後の決意ある行動に出られたのではと思います。
担当させて頂いた身としては、ヴィットリアに対して「アッスンタをどうかよろしくお願いします…!」という気持ちがありました。彼女には本当に幸せになってほしいです。
カテリーナは自身の正義を貫き通す、権力を持った強い女性です。それも一つの原因となってアッスンタとの間に歪みが生じ、関係が崩れてしまいましたが、もしアッスンタの本心に寄り添って行動してくれるようなタイプだったら、とても頼もしいお姉さんだったのではないかなと思います。

── アッスンタは二人の息子を持つ母で、カテリーナも一人の息子を持つ母親です。二人の、子どもに対する愛情の表現の仕方にどのような違いを感じましたか?

林:「存在そのもの、その人格を大切にし、心の深い部分をも想い愛しているか」と「自分の所有物のように表面だけを愛でているか」の違いではないかなと私は思いました。アッスンタが愛しているのは息子たちで、カテリーナが愛しているのは自分自身のように感じます。
「愛」という部分はそれぞれ変わらないはずなのに、その中に温かさと冷たさがあって…やはり一言では言い表せない、奥深いものなんだと改めて考えさせられました。

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── 作品の冒頭でアッスンタは理不尽な再婚をさせられていますが、その相手であるマフィアの構成員、ナンドとの夫婦関係について、感じたことを教えてください。

林:強制結婚自体にはとても胸が痛みましたが、ナンドの不器用ながらも一途で、愛する人を大切にしようとする姿は素敵だなと思いました。
アッスンタにとっては受け入れがたく嫌々ながらの結婚でしたが、ナンドの彼女のためを思っての行動や寄り添おうとする一生懸命さと、彼女本来の優しさとで、長い年月をかけて二人はいい夫婦になっていけそうな気がしています。

── アッスンタとご自身の共通点、および共感できる点があれば教えてください。

林:強さと弱さのバランスが似ているかもなと感じていました。
特に強さの部分に共感できることが多くて、私も大切な人が何か困ったことや厄介なことに巻き込まれそうになったら、きっと彼女同様立ち向かって守りに行くのではないかと。だから、ヴィットリアと対立するシーンでは考え過ぎずに自然に演じることができた気がします。あと、お誕生日が一日違いだったのにも運命を感じました! 同じてんびん座です!(笑)

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── 特に印象に残ったキャラクターは?

林:息子の一人のジュゼッペです。
ちょっと荒っぽくて無鉄砲なところもありますが、アッスンタの心の支えとも言える存在です。
浜辺のシーンでのアッスンタへの一言が本当に優しくて頼もしく、嬉しくて…泣きそうになりながら演技していました。一人立ちしようとしている彼の決意とか、愛情深さとかがギュッと詰め込まれている、ぜひ観ていただきたいシーンです。
ジュゼッペには、いつまでもアッスンタの傍で家族を守りながら笑っていてほしいと思いました。

── 最も難しかったシーンを教えてください。

林:とある泣くシーンなのですが…セリフがない中でどう感情の流れを表現するかがとても難しかったです。
これほど長い泣きを演じたこともなかったので、かなり試行錯誤を重ねて取り組みました。気持ちを途切れさせないよう意識しすぎてわざとらしくなってしまったり、逆に泣きすぎてしまって画とのシンクロとか、感情とかが疎かになってしまったり…。
あとはリハーサル映像でこのシーンを見る度に、アッスンタとしてではなく映画を観ている私個人として泣いてしまうことが多くて、なかなか練習が思うように進まず、次の日目が腫れてしまったりもして大変でした!

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── 最も心に残ったシーンを教えてください。

林:2 ヶ所あります。一つは先程も少しお話させていただいた、家族 3 人で浜辺を走るシーンです。
作中で唯一、微笑み溢れる家族団らんが描かれていて、家族の絆を感じられるシーンでもあります。ジュゼッペからアッスンタへ向けての言葉と想いによって、それまでの彼女の苦労や辛さが報われたように思えて…それがとても嬉しく、一番心に残っています。
なので、演じる際にも彼女たちのバックボーンを意識しながら、気を許しているからこその温かい気持ちを忘れないよう心がけました。
もう一つは、カテリーナと口論するシーンです。
カテリーナを担当された南澤まおさんとは本番別録りだったため、事前に 1 度だけリハーサルをさせていただけたのですが、お芝居から溢れ出るカテリーナのパワーに圧倒されて怯みそうになりつつ、それに負けないように、アッスンタの心の痛みを全力でぶつける気持ちで挑みました。
圧倒される感覚を同じブース内で体感することができ、とても勉強になったシーンです。

── 今後はどのようなキャラクターに挑戦したいですか?

林:様々な役にチャレンジしたいと思っているのですが、少年役をほとんど演じた事がないので挑戦できるよう練習を重ねています。
あとは人外と呼ばれる動物やぬいぐるみ、宇宙人のような人間ではないキャラクターに挑戦してみたいです! 動物っぽい声だよねって言われたことがあって(笑)、そこも声優を志すきっかけにのひとつになっていますので。

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── 最後に、この作品をまだ観ていない方々にひと言お願いします。

林:現実から目を背けずに、受け入れることによって見えてくるものや感じられるものがあると思います。様々な角度から観ることによって受け取り方も変わってくるでしょう。それぞれの視点で構いませんので、必死に生きている彼女たちを、最後まで見届けていただけますと幸いです。
すでに作品を観てくださった方も含めて、この度はインタビューもお読みいただきありがとうございました。


■ ランド・オブ・セイント 聖人の邦 (2014年 イタリア) 作品データ

■ 監督  フェルナンド・ムラーカ
■ 出演
 ヴィットリア:ヴァレリア・ソラリーノ
 アッスンタ:ダニエラ・マーラ
 ドメニコ:ニンニ・ブルスケッタ


■ ストーリー

ヴィットリアは南イタリアへ赴任してきた若い判事。この地方で暗躍する犯罪組織「ヌドランゲタ」の撲滅という理想を胸に新生活をスタートさせた彼女は、その下部組織──アルフレード・ラーゾとその妻カテリーナを中心とする一味──が日夜繰り広げる暴力や犯罪に直面する。
組織のために死んでいく若者たちや命の危険に晒された子どもたち、そしてそれでもなお司法の介入を頑なに拒む母親たちの生き方を目の当たりにして、ヴィットリアは未来ある命を救うため、ひとすじの隘路を切り開く決意をする…


■ 日本語吹替版キャスト
  ヴィットリア  桜井 春香 /  アッスンタ  林 あゆり /  カテリーナ  南澤 まお /  ドメニコ  石原 雅人 /  アルフレード  近衛 頼忠 /  ナンド  天野 惠 /
  ジュゼッペ  犬丸 義貴 /  パスクワーレ  吉岡 翔悟 /  フランチェスキーノ  雪村 真以 /  検事長  八鳥 浩一 /  弁護士  北口 聖 /  書記官  小出 明 /
  社会福祉士  岩元 絵美 /  保育士  武田 恵瑠々 /  エステティシャン  幸野 央枝・安達 菜都 /  警察署員  さきとう 薫 /  面会人  乙羽 美輝


■ 予告編 ( 吹替版 )



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